でも、良い機会かもしれないと思い直す。
 父がセシリアに関心がないのは確定だが、母が娘をどう思っているのかわからない。セシリアが前世を思い出して二年ほど経過していたが、それがわかるほど会っていないのだ。
 ここはしっかりと対面して。母が自分をどう思っているのか、確認したほうがいいのかもしれない。
「そうだわ。料理を作って持っていくのはどうかしら?」
 去年頃から父に頼まれて、アルヴィンのための料理を母にも提供するようになっていた。料理を持っていけば、話題がなくとも何とかなるだろう。
 まだ午前中だ。
 今から作れば、昼食には間に合うだろう。
「お母様に、お昼頃に伺いますとお伝えして。あと、料理長にお母様の昼食を作りたいから、手伝ってほしいと言ってほしいの」
 セシリア付きの侍女が、それを伝えるために部屋を出ていくと、セシリアはさっそく厨房に向かった。
「何を作ろうかしら?」
 そろそろ気温も上がってきた頃だ。
 母は季節の変わり目に、体調を崩すことが多い。十歳の誕生日もそうだった。
「冷たいスープがいいわね。あと、トマトのゼリーなんかもいいかもしれない」