あれからセシリアはアレクに会うことはできなかったが、対面した神官のリアスによると、思いのほか落ち着いた様子だったらしい。王太子という重圧から、解放され、少し気持ちが楽になったのかもしれない。
 ララリは何度も彼に手紙を書いている。返事はまだ一度もないようだが、それでも諦めないと笑う彼女は、いずれリアスの助手として、アレクの元を訪れたいと願っているようだ。
 そのためには、もっと治癒魔法を学ぶ必要があると、学園が閉鎖している間、ずっと図書室で勉強をしているようだ。
 セシリアの腕には今も、魔力を封じる腕輪がある。
 アルヴィンには悪いと思うが、一連の事件を解決したのは彼ひとりだということにしてもらった。
 実際、ほとんどがアルヴィンのお陰である。
 この国はアレクが懸念していたように、魔力至上主義だ。
 セシリアにはまだ、表に出る勇気が持てなかった。
 でもいずれは、アレクを救うために努力をしているララリや、兄の理想を実現させようとしているミルファーのように、与えられた力を使って誰かのために役立ちたい。