セシリアは、アルヴィンと一緒に王都の大通りを歩いていた。
 いつもは大勢の買い物客で賑わっている場所なのに、今日は人通りが少ない。町の片隅では、不安そうな顔をして話し合いをしている人たちもいた。
 王城での事件は隠蔽されているが、何か起こったことだけはわかってしまったようだ。加えて、王太子であるアレクがそれを機に表舞台から姿を消している。
 この国の先行きを不安に思うのも、当然かもしれない。
 それでも、いずれこの騒動も収まり、少しずつ平穏を取り戻していくのだろう。
 もちろん、魔族のことは一部の者しか知らない。
 さすがに王太子が劣等感から魔族に魅入られてしまったなど、貴族にも伝えることはできないだろう。
 アレクは体調を崩し、海辺にある町で静養することになったと発表された。
 もしこのまま体調が回復しないようであれば、貴族たちの後押しもあって、王女ミルファーが王太女になることになる。
 ミルファーは、かつて聞いた兄の理想を少しでも受け継ぎたいと思っているようだ。もう彼女が、魔力の少ない者を蔑むことは二度とないだろう。