必死に立ち上がり、彼のもとに歩こうとしたセシリアを、背後から誰かが支えてくれた。
 馴染みのある気配。
(ああ……)
 アルヴィンが来てくれた。
 安堵したセシリアは力を抜いて、背後の人物に身体を預ける。
「セシリア。遅くなってすまなかった」
 どれほど急いだのか、息を切らせたアルヴィンが、セシリアを背後から抱きしめた。
「魔道具が、完成したのね」
「ああ、これだ」
 アルヴィンが差し出したのは、クリスタルとムーンストーンが埋め込まれた腕輪だ。たしかにセシリアが身につけていた、魔封じの腕輪とよく似ている。
 この魔道具がアレクの力を奪い、セシリアを助けてくれたのだ。
「それを、王太子殿下に」
「ああ」
 アルヴィンは倒れ伏すアレクにその腕輪を嵌めると、念のために魔法で拘束した。
 フィンがどうなったのか尋ねると、彼にも同じ魔道具を付けさせ、そのまま治療のために神殿に運ばれたらしい。
 アルヴィンから受けたダメージが、相当大きかったのだろう。
 もともとフィンは、魔力は少なくとも魔法知識は豊富だった。