不思議に思って顔を上げると、アレクは両手を前に突き出したまま、信じられないような顔をしていた。
「魔力が……。力が消えた? そんな、どうして……」
 その呟きを拾って、セシリアは用心深くアレクの様子を探る。
 たしかに、彼の中に存在していた魔族の力が綺麗になくなっていた。
 セシリアは安堵から座り込みそうになっていた。
 アルヴィンだ。
 きっとララリから材料を受け取り、魔を退ける魔道具を完成させてくれたのだろう。
「どうして……」
アレクは何度も魔法を使おうとしているが、すべて未発に終わっている。
 セシリアも体力の限界だった。でも、今しかない。
 防御魔法を解き、アレク目がけて電撃を放った。あまり彼を傷つけず、それでも意識を奪う程度に調整した魔法だ。
 闇の力を失ったアレクには、それを避ける術はない。
「うわああっ」
 電撃に打たれ、倒れ伏す。
 それを見届けると、セシリアも崩れるようにその場に座り込んだ。
(まだ終わりじゃない……。しっかりしないと……)
 アレクを拘束して、騎士団に渡さなくてはならない。