「馬鹿な……。君にこんな魔力があるはずが……」
「申し訳ございません、殿下。わたしは父の魔力を受け継いでいます」
 そう答えると、アレクの表情が恐ろしいものに変化した。
 怒りと憎しみに歪んだ瞳で、セシリアを睨み据える。
「そうか。君もまた、我々が排除するべき敵だったのか。だったらもう、君に用はない。さっさと死んでくれ」
 そう言うと、大量に闇の刃を出現させ、すべてをセシリア目がけて容赦なく打ち込んできた。
「……っ」
 とっさに防御魔法で防ぐが、あまりの衝撃に耐えきれずに弾き飛ばされてしまう。
 何とか体勢を整えて、アレクを見据えた。
(さすがに、魔族の力は強いわ)
あまり時間をかけてしまえば、体力が持ちそうにない。セシリアは防御魔法をそのままに、今度はこちらから攻撃を仕掛ける。
 だが、すべて防がれてしまった。
 魔力は豊富にある。気を付けなければならないのは、体力だ。
 実戦経験が少ないのは、互いに同じ。
 このまま魔法を打ち合うだけでは、いずれ体力で劣るセシリアが不利になってしまう。
(何とかしないと……)
 少しだけ、焦りを感じていた。