「……残念だよ。君なら身分も魔力も、私にふさわしいと思っていたのに。でも、すべてが終わるまで眠っていてもらえばいいね。そうすれば、君も考えが変わるだろうから」
 そう言うとアレクは、セシリアに向かって魔法を放つ。
 闇に属するものだとはっきりとわかるような、禍々しい魔法だった。
 もちろん、そんな魔法を受けるつもりはない。
 セシリアが防御魔法を発動させると、アレクの魔法は壁に当たったかのように砕け散った。
「何?」
 まさか防がれるとは思わなかったのだろう。
 アレクの顔が驚愕に歪む。その隙を逃さずに、今度はこちらから魔法を打ち込む。
 セシリアの魔力の強さはやはり父譲りなのか、得意な魔法も同じ雷撃魔法だ。死ぬほどではないが、動けなくなるくらいの魔法を容赦なく打ち込んだ。
「……くっ」
 アレクは身体に闇を纏って、何とかそれを防いだ。
(やっぱり殿下もわたしと同じで、魔力を持て余している。魔法を使い慣れていないようね)
 とっさに魔法で打ち返したのではなく、闇の力を使ったのがその証拠だ。
 これならアルヴィンが来てくれるまで、セシリアでも何とか相手にできるかもしれない。