おそらくアレクは、ララリが本当に自分を想ってくれていることを知っている。だからこそ、闇に堕ちてしまった自分と関わらせまいとして、そんなことを言っているのだろうか。
「君ならわかってくれるはずだ。セシリア・ブランジーニ。あのブランジーニ公爵の娘でありながら、人並みの魔力しか持たないことを嘆かれたことくらいあるだろう。そんな者たちを、見返したいと思わないか?」
 セシリアはそっと、自らの腕に触れた。アレクに気付かれないように魔力を制御しながら、魔封じの腕輪を外す。
「思いません、殿下」
 アレクの顔を見て、きっぱりとそう言った。
 ゲームではあんなに優しかっただろう彼が、ここまで歪んでしまったのだ。おそらくセシリアの想像以上に、つらい日々だったのかもしれない。
 でも魔族の力を借り、より強い力で国を支配しようとするのは、間違っている。そんなことを許すわけにはいかない。
 しかも彼が目指しているのは、自分より強い魔力を持つ者をすべて排除して作る世界だ。
 ただ自分が上位に立ちたいだけの、自分勝手な考えに賛同するつもりはない。