「話はすべて、王女殿下から聞きました」
 そう言うと、アレクは足を止めた。
「……どんなに強い力を誇っていた者だって、自分よりもさらに強い力の前ではあれほど無様になる。今のミルファーを見て、誰がこの国の至宝だなんて思うだろう」
 いつもと変わらない穏やかな口調。
 だが今のアレクは手にした力に溺れ、ゲームで悪役令嬢だったセシリアのようにすべてを憎み、蔑んでいる。
「ララリさんが、殿下のことをとても心配していました」
 そんな彼を心から案じている人もいる。
 それを伝えたくてララリの名前を出してみたが、それを聞いたアレクは歪んだ笑みを浮かべた。
「心配? 彼女は憐れんでいるだけだ。平民の血を引きながら、貴族として迎えられるほど魔力の高いララリは、たいした魔力を持たない私に優越感を持っていたのだろう」
「ララリさんは、殿下がとても親切にしてくださったと言っていました。まだ貴族としての生活に慣れていない自分を気遣ってくれたと」
「あれは、使える女かどうか観察をしていただけだ」
「……そうですか」
 ララリの想いをそう一蹴するアレクだったが、その表情は悲しみに満ちていた。