セシリアよりも細い腕が、守るように抱きしめてくれた。それが何よりも心を落ち着かせてくれる。
「ありがとう、アルヴィン」
 こんなところで魔力を暴走させたら、大変なことになっていた。
「礼など不要だ。俺はお前の守護騎士だから」
 まだ幼いながらも騎士としてあろうとする姿に、セシリアの中のアラサー女が尊いと叫んでいる。
「そうね。ずっとわたしと一緒にいてね」
 もちろんだと囁かれた言葉に、転生してからずっと感じていた孤独感が消えていく。
(あなたがいてくれたら、わたしはきっと大丈夫)
 そんなことを思う。
 それからセシリアはアルヴィンを連れて帰り、冷めてしまった料理を魔法で温めた。
「わたしが作ったの。もし食べられそうなら、少しでも食べてみて」
「セシリアが?」
「うん、アルヴィンに食べてほしくて」
 そう言うと、彼は頬を染めて俯いてしまう。
 複数に囲まれても凛として顔を上げていたのに。また熱が上がったのかと慌てたが、アルヴィンは違うと頑なに首を振った。
「ありがとう。頂くよ」
 ゆっくりと、噛みしめるようにリゾットを食べているアルヴィンの姿を見ているうちに、心が満たされていく。
(明日は何を作ろうかな? まだ熱が下がらないようだったら、野菜をたっぷりと使ったポタージュとか、いいかな?)
 いつのまにか父に乞われて母の分まで作るようになったのは、それから一か月後のことだった。