背後から聞こえてきた弱々しい声に振り返ると、リアスに支えられた王女が、思い詰めたような瞳をしてこちらを見ていた。
 彼女にはまだ休息が必要だ。
 ゆっくりと休んでいてほしいと言いかけて、縋るような瞳に口を閉ざす。
 攻撃した兄を恨むのではなく、むしろ自分の言動が兄を追い込んでしまったと考える彼女は、本来の人格に戻っているようだ。
 そうだとしたら、ただ黙って休んでいるのは苦痛だろう。
「王女殿下には、国王陛下と王妃陛下を始めとした、王城に残った人たちの救出のために、騎士団と魔導師団を出動させていただきたいのです」
 それは王女であるミルファーしかできないことだ。
「……それには、ここで起こったことをすべて、話さなくてはならないわ」
 セシリアの言葉に、ミルファーは俯いた。
「私の言動がお兄様を追い詰めてしまった。それなのに私は被害者扱いで、お兄様は……」
 これだけの騒動を起こしてしまったのだから、さすがに咎めなしということにはできない。
 王太子の地位を剥奪されてしまうことも、十分考えられる。
「この件は、私が起こしたこと。そうすることはできないかしら?」