「お兄様はもう、この国はもう一度作り直すしかないと言っていたわ。私も含め、魔力の強い者は全員抹殺して、魔力を持たない平民と、同じような魔力を持つ貴族だけの国にすると。そのためにまず、私を殺さなくてはならないと、笑って……」
 震えるミルファーを、ララリが抱きしめる。
 でもその表情は、ミルファーと同じくらい怯えていた。
 優しい王太子を慕っていたララリ。
 彼は魔族に操られていて、魔族さえ倒せばきっと元の優しい彼に戻ると信じていた。セシリアも、その可能性はきっとあると思っていた。
 でも今の話が本当なら、魔族の力を得たのは、彼自身の意志。
 アレクは自分で掲げた理想の重さに押しつぶされ、破滅してしまったのだ。
「大丈夫」
 セシリアは、今にも泣きだしそうなララリの背に手を添えた。
「あの魔法式のことを覚えている?」
「魔法式……。魔を退ける魔道具を作るための……」
「ええ。あの魔法式を、アルヴィンが解読してくれたの」
 そう言うと、ララリの瞳に希望が宿る。
 まだアレクを救えるかもしれない。
 そう思ったのだろう。