大きな寝台には、青白い顔をした王女が眠っていた。周囲には、複数の侍女が倒れている。リアスが王女のもとに駆け寄ると、ララリが倒れていた侍女のところに向かう。
 セシリアは周囲を見渡しながら、襲撃を警戒していた。
「王女殿下は……」
「かなり衰弱していますが、おそらく大丈夫です。治療を開始します」
 リアスが治癒魔法を唱える。侍女たちの容態を見たララリも、それに加わった。
 セシリアはその光景を静かに見守る。
 治癒魔法はセシリアも得意だったが、今は魔力を保存するべきだ。きっとアレクはこの様子を、どこかでじっと見つめているに違いない。
「……っ」
 セシリアが見守る中、王女はゆっくりと目を開いた。
 その瞳は完全に怯えていて、彼女はいきなり起き上がって逃げようとする。
「ごめんなさい、ごめんなさい、殺さないで……。私が、悪いの。だから……」
 リアスとララリが慌てて王女を支え、安心させるように背を撫でながら声をかける。
「大丈夫です。ここには私たちしかいません」
「落ち着いてください。ゆっくりと、深呼吸をして」