セシリアはふたりの姿が見えなくなるところまで走ると、柱の陰に隠れてそっと周囲を伺った。
 誰もいないようだ。アルヴィンのように気配を探るのは上手くできないから、少しずつ、慎重に進むしかない。
 そういえば彼と出逢ってから、これほど離れるのは初めてだ。自分から離れてきたというのに、心細く感じてしまい、セシリアはそんな自分を律するようにきつく両手を握りしめる。
 とにかく一刻も早く、ララリとリアスに合流しなければならない。
 廊下を進んでいくと、侍女が倒れていることがあった。確認すると、眠っているだけのようだ。彼女たちは皆、廊下の隅に寝かされている。ここをあのふたりが通って行ったのだろう。
(王女殿下の部屋は、こっちかしら?)
 王太子アレクの気配は、不気味なほど感じない。
 それでも警戒しながら、あまり馴染みのない王城を手探りで進んでいく。
「ララリさん!」
 ようやく王城の奥でふたりの姿を見つけ、セシリアは走り寄った。
「セシリア様?」
 ひとりでここまで来たことに驚かれ、ふたりが心配だったと告げる。
「……それで、もしかしたら罠かもしれないと思ったの」