アルヴィンは陽炎のように揺らいでいる王城の前に立つと、片手を上げて目を閉じた。
「中にいる人間は皆、意識を失って倒れている。怪我をしている者はいないようだが」
 内部の様子を探っていたアルヴィンがそう言うと、セシリアはほっと胸を撫でおろした。さすがのアレクも、無駄に人の命を奪うようなことはしないようだ。
「王女殿下は?」
 その分、標的には容赦なかった。
 彼女の身が心配になって尋ねると、アルヴィンは難しい顔をした。
「……生きている。だが、反応が弱い。あまり猶予はなさそうだ」
 その言葉に、傍で聞いていたララリとリアスの顔も緊迫したものになった。
「結界は、破れそう?」
 セシリアは、魔力を封じている腕輪を指でなぞりながら、そう尋ねた。魔力はあっても、まだ知識が足りないセシリアでは、結界を破ることはできない。
「ああ。大丈夫だ」
 アルヴィンはそんなセシリアの言葉を受けて、結界に魔力を注ぎ込む。
 結界を張るときと同じように、破るときも魔力を注ぐ必要があるらしい。
 セシリアはそんな彼をいつでも補助できるように、彼の背に手を添えていた。
「セシリア」