「アルヴィン、行ってみましょう」
 セシリアが声を掛けると、彼は頷いた。
「ああ。急いだ方がいいようだ」
 ララリとリアスにはここで待っているように言ったが、王太子を心配するララリと、王女を救う使命を持っているふたりは、聞き入れてくれない。
 それにどちらも、治癒魔法を使える。
 もしかしたら治療が必要な怪我人が、王女の他にも出てしまうかもしれない。そう考えたセシリアはふたりを連れて、アルヴィンとともに王城に向かった。
 王都はいつもと変わらず、賑やかで活気ある場所だった。王都を守る結界がしっかりと機能しているので、魔物の影もなく、多くの人々が出歩いていた。
 でも彼らは不自然なくらい、王城の異変に気が付いていない。
 認識妨害の魔法が掛けられていて、魔力のない一般市民では気が付くことができないようだ。
 王城の前は無人だった。
 リアスの話では、先ほどまで警備兵や複数の貴族たちが集まって、中の様子を伺っていたようだが、すでにその姿はない。結界はそのままなので、なす術がないと諦めたのか、他の手段を探しているのかもしれない。