何もできないかもしれませんが、と言う彼女に首を振る。こうして傍にいてくれるだけで、心強い。
 壁に寄り掛かって腕を組み、ずっと外の様子を伺っていたアルヴィンが、ふいに顔を上げる。
「アルヴィン?」
 緊迫した雰囲気を感じ取って、セシリアが声を掛けた。
「戻って来たようだ」
「!」
 思っていたよりもずっと早かった。それを聞いたララリも、驚いた様子で立ち上がる。
 王城に向かったばかりのリアスは、青ざめた顔して戻ってきた。
「リアス様、どうしたんですか?」
 駆け寄ったララリが尋ねると、彼は悲痛な声で言った。
「王城に入れませんでした。強力な結界が張ってあるようです。私の力では、破ることができませんでした」
「結界?」
 その話を聞いたセシリアは急いで窓に駆け寄り、そこから王城を見つめた。
 ゆらりと陽炎のように、王城が揺らいでいる。
「まさか、こんなことが……」
 おそらく、魔族の力を借りた王太子アレクのしわざだ。王女が回復してしまえば、すべてが明らかになる。
 その前に動いたのか。
 これで国王も王妃も、そして王城を守るべき近衛騎士団もすべて、結界の中だ。