日中に起きた事件にも関わらず、怪しい人影を見た者がいなかったことから、相手は魔物ではないか。王都の結界はまったく効果がないのではないかとも言われているらしい。
 きっと、犯人は王太子のアレクだ。
 敵は外部から侵入したのではなく、最初から王城にいた。
魔物ではなく魔族の力を使って、彼は自分を侮り、嘲笑っていた妹にとうとう復讐をしたのだ。
 まさか王女が襲われるとは思わなかった。
 しかも王城は責任の所在を、王都の結果を張ったアルヴィン、そしてブランジーニ公爵家に向けようとしている。
 もちろん、王都の結界は完璧だ。それは、誰が見ても明らかな事実。
 でも王女を守れなかった者達は、責任を取ってくれる人間を必要としている。
 ここでセシリアが、犯人はきっと王太子だと言っても誰も信じない。
 それどころか、はっきりとした証拠もないのに王太子に罪を着せようとしたとして、逆に裁かれてしまうだろう。事情を知るフィンやララリでさえ、何も言えないだろう。
(……どうしよう。まさか、こんなことになるなんて)
 王女の意識が回復すれば、きっと犯人は兄であると証言してくれる。