しかし長年のコンプレックスで、彼自身の性質が歪められてしまっていた場合は、事情が異なる。魔の影響がなくなると多少は改善されるだろうが、元の彼に戻るには、長い年月が必要かもしれない。
 だがアレクには、彼を慕い、寄り添ってくれるヒロインがいる。
(そこは、ヒロインに任せるとして、わたしたちは魔族との戦いに備えるべきよね)
 決意を込めて、両手を握りしめた。
 魔道具の材料をすべて揃えるには、数日かかる。それさえ揃ってしまえば、アルヴィンが完全な魔道具を作ってくれるだろう。
 だがその魔道具が完成する前に、魔に魅入られた王太子アレクは、セシリアが想像もしていなかった場所から攻撃を開始した。
 セシリアは、王城で王女ミルファーが襲われたという話を聞いて驚愕する。
「まさか、王女殿下が!」
 彼女は王城にある自分の部屋で、意識のない状態で発見された。王女の守護騎士は、彼女を守るようにして倒れていたそうだ。
 近衛騎士や騎士団が常在している王城で、よりよって王女が襲われた事件に、王城内は騒然としているようだ。
 しかも、かなり高い魔力を持つ王女がなす術もなく倒されている。