それからセシリアは、ゲームとこの世界の違いをじっくりと考えてみた。
 ゲームでは、ヒロインに嫉妬した悪役令嬢のセシリアが魔族に惑わされ、その力を得てこの国を滅ぼそうとした。
 セシリアは黒い瘴気で一般人を操り、国内のいたるところで騒動を起こした。魔物の活動も活発になり、ヒロインが王都に命懸けで結界を張ったのもこの頃だ。
 だが、現実は違っている。
 悪役令嬢に値するのは王女であるミルファーだと思われるが、彼女は魔族とは直接関わっていない。
 代わりに魔族に魅入られてしまったのは、王太子であるアレク。
 本来の彼は少し気弱だが、誠実で優しい人物だ。
 魔力至上主義のこの国で、妹よりも劣る彼は追い詰められていった。彼はゲームの悪役令嬢のように、その嫉妬や劣等感を魔族に利用されてしまったのかもしれない。
 それでも彼の側近のフィンが、魔を退ける魔道具の作り方を記した本を発見したことによって、解決する兆しが見えてきた。
 アルヴィンによると、その魔道具は、魔族の力を封じて大幅に弱める効果があるらしい。魔の影響をほとんど受けなくなるので、フィンやダニー、王女ミルファーのように、負の部分を闇の力で強調されていた場合は、すぐに正気に戻ると思われる。