「あ、例えば、という話で……。そんなに深い意味は……」
 同級生に比べるとかなり大人びているが、アルヴィンもまだ十五歳だ。
 自分の精神年齢が二十代後半だったので、深く考えずについ言葉にしてしまった。でも十五歳の貴族の令嬢という立場を考えると、少し大胆だったかもしれない。
 けれど、そんな焦っているセシリアを見て、アルヴィンは柔らかく微笑んだ。
「そうだな。セシリアは俺よりも強い。心配はいらなかったな」
 そういう彼からは、先ほどまでの焦燥感を感じない。
「ええ、もちろんよ」
 少し恥ずかしい失言だったが、それでもアルヴィンの雰囲気が和らいだことが嬉しくて、セシリアも微笑みを返した。
 これで魔道具が完成すれば、王太子と敵対しなければならないという、不安要素がひとつ減る。王女ミルファーの高慢な物言いが魔族の影響だとしたら、きっと彼女も元に戻るだろう。
 大きく変わってしまったゲームの流れが元の形に近付けば、これからどう動いたらいいのかも、見えてくるに違いない。
 セシリアはこのとき、そう考えていた。