たしかに魔を退ける魔道具を手に入れることができれば、アレクは正常な状態に戻れる。それができれば、あとはララリがいる。きっと彼の弱い部分を理解して、支えてくれるだろう。
 それに魔道具があれば、これから始まるだろう魔族との戦いも有利に運ぶことができる。
 それなのに不安になるのは、そう言ったアルヴィンの顔が晴れやかではないからだ。
「アルヴィン」
 セシリアは手を伸ばして、彼の頬に触れた。
 初めて出会った頃は柔らかな子供の肌だったのに、今では引き締まり、身体つきも比べものにならないくらい逞しくなった。
 少年が少しずつ青年に変わっていく長い時間を、ともに過ごしていた。
 だからアルヴィンが落ち込んでいることが、セシリアにははっきりとわかってしまった。
「セシリア?」
「思っていることを話して。もしあなたが嫌なら、魔道具なんか作らなくてもいいのよ」
 他の方法を探そう。
 きっとふたりなら、もっと良い方法を見つけられるはずだ。
 そう言うと、アルヴィンは首を横に振り、頬に添えられていたセシリアの手を、両手で包み込むように握り締める。