「セシリアも読めるだろう」
 そう言われて、素直に頷く。
「ええ、わたしも少しなら。お父様の書斎にある魔法書は、ほとんどエイオーダ王国で書かれた本だったから」
「……変なプライドなど捨てて、すぐにでも協力を求めればよかったと思うよ」
 よほど大変だったらしく、フィンは肩を落とした。
「だったら、この魔法式も解読できるだろうか?」
 目の前に差し出された魔法書に、セシリアは視線を走らせる。
「……うーん。かなり複雑で、難解ね。読むことはできるけど、理解するのは難しそうだわ」
 そう言って、頬に手を当てた。
 簡単な魔法書ならば、魔法が発動する呪文が書かれている。だからそれを唱えれば、その魔法が使えるのだ。
 けれど高度な魔法書になればなるほど、正解に辿り着くための数式や理論が記されているだけで、読んだだけで魔法が使えるようなものではない。
 セシリアは、助けを求めるように背後にいるアルヴィンを見る。
「アルヴィンはどう?」
 彼は、しばらく目を細めて魔法書の文字を追っていた。
「……そうだな。理解できないこともないが、ここはブランジーニ公爵の知識を借りるべきかもしれない」