自分よりも強い魔力を持っている者が、強い立場の者が、妬ましくて仕方がない。とにかく強い力が欲しくて仕方がない。
 そして、それもダニーと自分だけに留まらず、他の生徒にも表れはじめているような気がした。
「魔族は人の悪意を好み、それを強めてしまう。魔族のことを調べていて、そんな記述を見たばかりだったから、もしかしたら、と思ってね」
 魔族のことを調べていたアレクが、その悪意に憑りつかれてしまったのではないか。フィンがそう考えたのも、悪意に支配されるようになったのは、彼の身近にいる人間ばかりだったからだ。
 側近候補であるダニー・マゼー。
 同じ立場であるフィン。
 そして、セシリアの兄のユージン・ブランジーニ。
 もしかしたら王女のミルファーもそうかもしれないと、フィンは語った。
「王女殿下は、もっと優しい思いやりのある方だった。ご自分の兄上に、あのような言葉投げかけるようなことはなかったはずだ」
 たしかに彼が名前を出した人達は、セシリアが覚えている限り、ゲームのときと性格がまったく違う。
 魔族の介入によって歪められてしまったのだとしたら、納得できる話だ。