特殊な魔法書がおいてあり、教師の許可を得た者しか入れない部屋のはずだ。どうやらフィンは、その特別謁見室でセシリア達を待っているらしい。
 あの場所には、防音魔法が掛かっていると聞く。
 もし図書館に他の生徒が来ても、扉を閉めてしまえば中の話を聞かれることはないだろう。
 まずアルヴィンが先に立ち、続いてセシリア。
 最後にララリが続いた。
 部屋の中は思っていたよりも広く、図書室の半分くらいの大きさはありそうだ。複数の机と椅子が並んでいて、その一番奥にフィンの姿があった。彼は開いていた分厚い本を閉じると、立ち上がってこちらを見た。
「わざわざ来てもらって、すまないね」
 フィンはそう言うと、アルヴィンとセシリア、そして最後に隠れるようにしていたララリを見た。その姿から、以前のような好戦的な雰囲気を感じることはなかった。
「君たちの手を借りるのは不本意なんだけど、どうしても、僕ひとりでは手に負えない問題のようだ。話を聞いてもらえないかな?」
 少し悔しそうにそう話すフィンからは、あの黒い瘴気を感じない。
戦闘になる可能性さえ考えていたセシリアは、少し拍子抜けしたくらいだ。