セシリアは手紙をアルヴィンに渡しながら、訝しげにそう呟いた。
 彼に相談を受けるような関係ではないのはもちろん、お互いに初対面の印象は最悪だろう。セシリアなど、アルヴィンを傷つけられた怒りで平手打ちまでしている。
 あのプライドの高そうな男が、そんな相手にわざわざ相談などするだろうか。だが気になるのは、その相談内容が王太子のアレクについてだということだ。
 罠なのか。
 それとも本当に切羽詰まった状態で、セシリアにまで相談しなければならない状態なのか。
「うーん、手紙だけでは判断できないわね。どっちかしら」
「会ってみるしかないだろうな」
「……そうね」
 気は進まないが、もともとこちらでも彼を探していたのだ。
 彼の状態を見定めるためにも、会って話をしたほうがいいだろう。
 もしフィンの周りにも兄のように黒い瘴気が見えたとしたら、魔族に操られているということになる。それを見極めるためにも、フィンとは一度、対面したほうがいい。
 それが、ふたりの出した結論だった。
 だが、驚いたことにフィンは、ララリにも似たような手紙を出していた。
「この手紙が届けられたんです」