魔封石探しは難航しているようだ。一般に流通しているようなものではないし、そもそもかなり入手困難な品だ。
「王太子殿下に関しては、きっとララリがいるから大丈夫。だって彼女はヒロインなのよ?」
 楽観的なセシリアの言葉に、アルヴィンは苦笑する。
「ヒロイン、か」
「愛が人を絶望から救い出してくれることを、わたしたちは知っているもの」
 そう言うと、アルヴィンはふと表情をあらためて、セシリアの手を握る。
「ああ、そうだ。俺の憎しみや悲しみ、憤りをすべて過去のものにしてくれたのは、セシリアだった」
 ずっと険しい顔をしていたアルヴィンの表情が、優しく和らいだ。
「彼女にも、同じことができると?」
「わたしはそう信じている」
 きっぱりと告げた。
「俺は王太子も、彼女のこともあまり信じていない。だがセシリアが信じているというのなら、俺もそうしてみよう」

 事態が急展開したのは、それから十日ほど過ぎた頃だった。
 ずっと探していたのに見つけられなかったフィンが、セシリアに相談したいことがあると手紙を送ってきたのだ。
「わたしに相談なんて、するような人かしら」