ララリはそう言って、少し首を傾げる。
「それでも、さすがに一度は顔を出すようにと言われているらしいんですが、もう少し待ってほしいと答えているようです。彼が何の魔法を研究しているのか、それはさすがに聞けませんでした」
「そう。ありがとう」
 ララリのことを庶民出身だと侮る者もいるが、人懐こくて明るい彼女のことを受け入れてくれる人も多い。彼女はセシリアでは聞けないような話も、たくさん聞いてきてくれた。
「その研究している魔法が、人に危害を加えるようなものでなければいいけど」
 思わず溜息をつく。
 疑うようなことはしたくないが、ダニーや兄の様子を見ていると、フィンが王太子と無関係だとは思えない。
 彼の性格が、ゲームのときよりも好戦的になっていることも気に掛かる。ダニーのことを考えると、それは黒の瘴気の影響ではないかと考えていた。
「あの、セシリア様」
 声を掛けられて我に返ると、ララリが沈んだ顔をしてこちらを見つめていた。
「どうしたの?」