「私は、気にしていませんと答えました。たしかにそういう人たちはいますけど、セシリア様とか、私を気にかけてくれる人たちはいます。それだけで、そんな嫌な気持ちなんか吹き飛んでしまいますから」
 だがそれは、アレクが望んでいる答えではなかった。
 彼はダニーやフィン、兄のユージンのような人間を望んでいた。誰かを羨んだり妬んだり、そういった負の感情を増幅させて、操ろうとしていたのだろう。
 でも、ララリにはそんなものはなかった。
 少し空気の読めないところはあるが、まっすぐな心を持っている。
 さすがにヒロインだけある。
「そうしたら、私はいらない、使えないって言われて。私、アレク様を怒らせてしまったのかもしれない」
 また涙を滲ませるララリに、セシリアはすべて話そうと決めた。
 彼女のまっすぐな想いは、きっとアレクを救ってくれるだろう。
 アルヴィンを見上げると、彼は黙って頷いた。
 セシリアはララリに向き直り、話を聞いてほしいと告げる。
「少し長くなるけれど、聞いてほしいの。あなたならきっと、王太子殿下を助けられると思うから」
 だってララリは、ヒロインなのだから。