「寮に戻っていたら、もう探せないわね」
 フィンを探すのは難しいと判断して、本格的にララリを探し始める。
 彼女もアレクを探して学園内を歩いているだろうから、どこかで行き違いになっているのかもしれない。
(でも見つかったら、何て言えばいいのかしら……)
 気持ちを伝えてあげたほうがいいと言ったその日に、今度は彼には近寄らないほうがいいなんて告げたら、ララリも困惑するに違いない。
 それでも彼女の安全のためには、それを伝えなくてはならない。
 ララリを探していろいろと歩き回ったが、結局彼女も見つけることができなかった。
 仕方なく教室に戻ると、誰かが教室の前に蹲っていた。小さく嗚咽が聞こえてくる。
 泣いているのかもしれない。
 顔は見えなかったが、美しい銀色の髪が、窓から降り注ぐ夕陽に照らされている。
「ララリさん?」
 見覚えのある髪色に思わず声を掛けると、ララリは顔を上げ、涙を溜めた瞳でセシリアを見上げた。
「セシリア様……」
「どうしたの? 何があったの?」
 差し伸べられた手を握ると、縋るようにして抱きついてきた。
 そのまま抱きしめて、彼女が落ち着くのを待つ。