「……でも」
「どちらにしろ、彼を止めるには魔族を倒さなくてはならない。できるだけ早く、魔封石を探そう」
「ええ、そうね」
 セシリアは頷き、アルヴィンの胸に頭を摺り寄せる。
 こんなに早く、魔族と戦うことになるとは思わなかった。予想外のことばかりで、心が追い付かない。
 それでも、魔族がもうこの国に出現してしまっている以上、戦うしかない。
 ふと、セシリアはあることに気が付いて顔を上げた。
「王太子殿下の傍にいた、もうひとりの側近候補。あのひとも、もしかしたら……」
 魔導師団長の息子で、王太子の側近だったフィン。
 王太子がセシリアの部屋に押しかけたあの日から、彼の姿を見ていない。でも彼もダニーや兄と同じく、王太子に近い者のひとりだ。
 そもそもダニーもフィンも、ゲームの攻略対象だったときとあまりにも様子が違っていて、それが不思議だった。
 もしかしたら彼も、ダニーや兄と同じように黒い瘴気に操られている可能性もある。
「探ったほうがいいかもしれないな」
 アルヴィンも真剣な顔をして頷いた。