魔力が高く、両親にも周囲にも期待されている妹のミルファーに悩まされていたアレク。
 彼にとって、そのミルファーよりも遥かに魔力の強いアルヴィンの存在はたしかに脅威だったのかもしれない。
 思えばダニーが狙ったのも、アルヴィンだろう。
 でもそのダニーは、相手にもならなかった。
 それによって、アレクはますますアルヴィンを恐れ、とうとう魔封石を使ったのだとしたら。
(もしあのとき、わたしが傍にいなかったらアルヴィンは……)
 ララリは、彼を少し気弱だが優しい人間だと言っていた。
 でも、それは違う。
「優しい人間は、そんなことはしないわ。自分の側近を利用したり、お兄様にあんなことをさせたりしない」
「そうだな。だが、すべてが彼自身の意思ではないかもしれない」
「……操られている、ということ?」
 彼に目をつけた魔族によって、負の感情が増大させられている可能性もある。
 アルヴィンの言葉によって、その可能性に気が付いた。
「まだ、間に合うと思う?」
 アルヴィンに尋ねると、彼は難しい顔をする。
「見込みがまったくないとは思わないが、簡単ではないだろう。あれほど強い執着を捨てるのは……」