困惑しているセシリアとは裏腹に、アルヴィンは冷静だった。
「それだけ力を欲していたのだろう。だが、力さえあればすべて解決できると思っている時点で、王太子は甘すぎる。世の中はそれほど単純ではない」
 強い魔力さえあれば何もかもうまくいくのなら、悪役令嬢になっていたセシリアも、これほど強い魔力を持っているアルヴィンも、幸せになっていたはずだ。
 でも実際はそうではないことを、セシリアもよく知っている。
 それに、王太子はダニーをとても気にかけているように見えたが、あの黒い瘴気のことを考えると、彼を操っていたのはアレクだということになる。
 そして、セシリアの兄のユージンのことも。
(そう考えると、の儀式のとき見たのは、やっぱりお兄様だったのね)
 その日のことを思い出して、セシリアは顔を上げた。
「王太子殿下が魔封石を持ってきたのは、故意だったということ?」
 兄のユージンを使って魔石を盗み出させ、代わりに危険な魔封石を使わせたのか。
「そうなるな。俺が目障りだったのかもしれない」
 アルヴィンは、あっさりと頷いた。