今日ばかりは、貴族の子女としてはしたないと言う気にはなれなかった。
「上手くいくかな?」
「……どうだろうな」
 アルヴィンはサンドイッチを摘まみながら、さして興味がなさそうに呟いた。
 セシリアは彼のためにポットから紅茶を注ぎながら、ひそかにヒロインの恋を応援していた。

 ふたりでゆっくりと昼食を楽しんだあと、教室に戻る。
 時間ギリギリで教室に戻ってきたララリは、アレクには会えなかったと肩を落としていた。
 学生であるが、彼は王太子だ。
 いろいろと忙しいのかもしれない。
 落ち込むララリを慰めているうちに、午後の授業が始まる。
 魔法の仕組みについて解説しているのはまだ若い男性で、魔導師団に所属しているエリートらしい。
 そのせいで女生徒からはかなり人気のようだが、セシリアは当然のことながら、彼にまったく興味がない。
 むしろ授業は知識をさらけ出しているだけでわかりにくく、やはり先生は知識と経験が豊富な人の方がいいなどと考えていた。
 それなのに、彼はやたらとセシリアに近寄るものだから、アルヴィンに威圧されて教師としての威厳まで失いそうだ。