(ああ、そういえばそうだった。ヒロインは、いきなりアルヴィンに話しかけたのよね)
 何だかもう、遠い昔の話のようだ。
 あのとき、セシリアはヒロインの存在を知り、ここが前世でプレイしていたゲームの世界だと知って、気分が悪くなって倒れてしまったことを思い出す。
「気にしなくてもいいわ。知らなかったのなら、仕方がないもの」
 そう言いながら、何だか既視感を覚える。
 この状況で、この会話。どこかで見たような気がする。
「セシリア?」
 黙ってふたりの様子を見守っていたアルヴィンが、心配そうに声を掛けた。
「大丈夫か?」
「アルヴィン。……ええ、大丈夫よ」
 また倒れるわけにはいかないと、差し出された彼の手を強く握った。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
 不安そうなララリの声に、胸がまたどきりとする。
「セシリアは身体が弱いんだ。少し静かにしていればよくなる」
 代わりにアルヴィンが答えてくれた。
「……そうですか。うるさくしてしまって申し訳ありません。私は向こうに移動しますね」
 ララリは心配そうな顔でそう言うと、ぺこりと頭を下げた。