「黒い瘴気には、魔族が関わっていると言っていたな」 
 アルヴィンの問いに、セシリアはこくりと頷く。
「そう。ゲームでは、魔族に魅入られた人間が、他の人間を操るときに黒い瘴気を使うの。つまり、もうこの国には魔族と関わり合いのある人間が存在していることになる」
「魔族か。少々、厄介だな。向こうの世界ではどうやって倒していた?」
 魔族は魔物と違って、滅多に姿を現すことはない。
 でもその残忍さは魔物とは比べものにならないくらいで、餌を求めて人間を襲う魔物とは違い、自らの楽しみのために人間を苦しめたり、惨殺したりする。
 さらに人間よりも何倍も魔力が強いという、まさに災害のような存在だ。
 数が少なく、大陸にひとりかふたりいるくらいなのが、不幸中の幸いか。
 でもこのシュテル王国はその魔族に狙われているのだから、幸いとは言えないのかもしれない。
「ゲームでは、儀式に使われてしまったあの魔封石で魔族を弱らせてから、倒していたの。でも、もうあの魔封石は使えないから……」