「それは、予言の力を持っていた人間が、作ったものかもしれないな」
「予言?」
「ああ。だがその人が見た未来は、自分の世界のものではなかった。それでも予言者として無意識に、形のあるものとして残さなければならないと考えた」
 もしその人物が漫画家だったら漫画として。
 小説家だったとしたら、小説として。
 それがたまたまゲーム制作者だったから、乙女ゲームという形になったのかもしれない。
「そっかぁ……。じゃあそのゲームをやったことがあるわたしが、この世界に転生したのも、偶然が重なっただけ?」
「セシリアがこの世界に転生したことに、意味がないとは思わない。ただ、この世界にも予言者はいるが、当たる確率はそれほど高くはない。セシリアがそのゲームで見たことがすべて、現実になるとは思えないな」
 その言葉に、セシリアは深く頷いた。
「うん……。当たる確率がそれほど高くないっていうのは、今までのことでよくわかったわ。まず、わたしがプレイしたゲームには、アルヴィンがいなかったもの」
 彼がいない。
 それは、とても大きな違いだ。