それでも今はもう、アルヴィンが信じてくれないかもしれないとは思わない。彼はセシリアの話を疑うことなく信じて、一緒に戦ってくれるだろう。
 でも、相手は恐ろしい魔族だ。
 しかもあの儀式のせいで、魔族を弱体化してくれる魔封石もない。そんな戦いに、大切なアルヴィンを巻き込んでもいいのだろうか。
「セシリア、俺はもう十歳の子供ではない。もう、守ってくれなくてもいいんだ」
 そんなセシリアに、彼は言い聞かせるように優しく言う。
「アルヴィン?」
「俺を巻き込むことを、怖がっているように見えた。だから今まで、話せなかったのだろう?」
「わたしは……」
 彼はもう立派な騎士で、魔導師だ。
 魔力はセシリアの方が強いかもしれないが、魔法の腕はアルヴィンの方が上である。
 そうわかっているつもりだった。
 でも彼の言うように、十歳のあの頃のように、まだアルヴィンを守らなくてはと思っている気持ちがあったのかもしれない。
「俺は頼りないか?」
「ううん、そんなことない。アルヴィンが強いのは知っている。ただ、わたしはあなたのことが大切で」