「……アルヴィン」
 セシリアを腕に抱いたまま、目を閉じているのはアルヴィンだった。よく見ればふたりとも、儀式のときの服装のままだ。
 彼を起こさないように気を付けながら周囲を見渡してみる。
 見覚えのある光景。
 ここは学園寮にあるセシリアの部屋の、応接間にあるソファーの上だった。
(ええと、儀式のあと、わたしは気を失ってしまったのよね。アルヴィンがここまで運んでくれたのかな?)
 アルヴィンも、相当量の魔力を使ってしまっていた。ここまで移動するのが限界だったのかもしれない。
 セシリアの部屋まで辿り着き、そのままふたりで眠ってしまっていたようだが、まさか朝になっているとは思わなかった。
 それだけ魔力を使ってしまったのだろう。
 でもゆっくりと眠ったお陰で、魔力はほとんど回復していた。
(こんなふうに寝顔を見るのは、子供のとき以来ね)
 間近にある綺麗な顔を見つめて、思わず微笑む。
 子供の頃は、こうして一緒に寝ることもあった。でも互いに成長して距離を取っていたが、今はまた恋人同士として寄り添い合うことができる。