ゲームでヒロインが王都に結界を張って瀕死になっていたとき、攻略対象たちは、こうやって魔力を分け与え、彼女の命を救っていた。
 アルヴィンはヒロインよりも魔力が高いから、あれほどの状態にはならないはずだ。
 でも、このままでは危険だということもわかっている。
 セシリアの魔力が、アルヴィンに注がれていく。
「このまま結界を張ってください」
「……わかった」
 セシリアに手を握られたまま、アルヴィンは結界の構築を再開させた。
 あと少しだと思っていたのに、思っていたよりも魔力を使うようだ。腕輪をしたままのセシリアでは限界に近かった。
 とうとうあんなに冷たかったアルヴィンの手のほうが、温かく感じてしまっていた。
「もういい。無理はするな」
 異変を感じたのか、アルヴィンがやや強引にセシリアから手を離す。
「駄目、まだ危険よ」
「このままではセシリアの方が危険だ。心配するな。あと少しだ」
「でも……」
 アルヴィンが離れていく。
 セシリアは必死に彼に追いすがり、強引に手を握った。振り解こうとするアルヴィンに、必死に訴える。
「わたしを引き離したら、この腕輪を外すわ」
「セシリア」