(あれは魔石じゃない! あの不吉な色……。魔力を封じ込める、魔封石よ!)
 ゲームの第二部でヒロインが使用していたアイテムだ。
 これで魔族の多大な魔力を吸収し、弱体化してから倒していた。
 だが魔石と違い、封じた魔力を使うこともできず、さらに人間の魔力も吸収してしまうため、どの国でも取り扱いを禁止しているほど危険なものだ。表どころか、裏社会にも流通していないという設定だった。
 おそらくヒロインが使っていたものは、この王城に保管されていた魔封石だ。見た目は魔石とほとんど変わらないから、王太子も間違えてしまったのかもしれない。
(本当に間違えたのかしら? それとも……)
 不審に思うが、とにかく今はアルヴィンを助けることの方が先だった。
 彼の右手を魔封石から引き離し、両手で包み込む。
 その手は冷え切っていた。相当な魔力を奪われたのだろう。
「セシリア?」
「アルヴィン、緊急事態なのでわたしも手伝います」
 彼にだけ聞こえるように、小声で囁く。
 とにかく今は彼をこれから引き離し、結界を張ってしまわなければ。
 セシリアは冷たくなったアルヴィンの手を取ると、自分の額に押し当てる。