ブランジーニ公爵よりも強いのでは、と囁く声が聞こえてきたが、彼らの反応などセシリアにとってはどうでもよかった。
(このまま無事に終われば……)
 祈るように両手を組み合わせて、魔法が成立するときを待つ。
 魔法で張る結界は、目に見えないものが多い。
 でも以前王都に張られていた結界は、住む人間に安心感を与えるために、ドーム状の筒のような形をとっていた。アルヴィンは国王の要望により、それと同じ形にするようだ。
 透明なガラスのような結界が、王都の空を覆っていく。
 魔法でその様子を透視していたセシリアは、ふと嫌な予感がして、意識を目の前のアルヴィンに向けた。
「!」
 彼の魔力が、何かに吸い取られるように一気に減っていた。
(どうして? もう結界は構築されているはず)
 セシリアは動揺して、周囲を見渡した。
 結界は張られ、あとはその形を示すだけだったはずだ。
(アルヴィン!)
 彼はわずかに顔を顰めたが、動揺することなく結界を維持している。魔石の上に置かれていた右手が、わずかに震えているだけだ。
 その魔石が赤く光っていることに気が付いて、セシリアはアルヴィンに駆け寄った。