それでも王都に結界を張るために、王家が用意した魔石を使用するというシナリオが必要なのだろう。それなら、王城で魔石が盗難にあったという醜聞もなかったことにできる。
 そのために王太子と王女は、とりあえず外見は似ている魔石を持ち出したのかもしれない。
 でもとりあえずここは、それに従うしかない。
 王家に対する忠誠を疑われたら、ブランジーニ公爵家だって厄介なことになってしまう。
 アルヴィンに視線でそれを訴えると、彼は軽く頷いてくれた。
(いろいろと、面倒だなぁ……。お父様が王城に寄りつかなくなるのが、わかる気がする)
 思わず溜息をつきそうになるが、必死に堪えた。
 何度も練習したように、儀式は滞りなく進んでいく。
 ブランジーニ公爵の代理として、セシリアが王太子アレクに忠誠を誓い、その証として王都に結界を張ることを宣言する。
 そうして、いよいよアルヴィンの出番となる。
 ブランジーニ公爵家の紋章が入った騎士服を着た彼の姿は、見慣れているセシリアでも、目を奪われるほどに凛々しく、美しい。思わずちらりと王女に視線を向けると、彼女もまた頬を染めてアルヴィンを見つめていた。