一緒に魔法を使えば、もしアルヴィンに異変があったとしてもすぐに気が付くことができる。
 それなのに、儀式が始まる直前に、王太子のアレクから代わりの魔石が見つかったという報告があった。
「代わりの魔石?」
 アルヴィンが用意していた魔石はかなり大きく、特殊な造りになっていた。それと同じようなものが、簡単に見つかるとは思えない。
 王城の宝物庫で見つかったということだが、それがあったのなら、最初から王太子も王女もあれほど慌てなかったのではないか。
(何だか嫌な予感がする……。でも……)
 魔石はもう先に会場に運び込まれているらしく、確認することはできない。
「アルヴィン」
「どうした?」
 不安を訴えると、彼も不審に思っていたようだ。
「その魔石は使わない。なるべく俺の魔力だけで結界を張るつもりだが、もし足りなかったら、そのときは頼む」
「……うん」
 セシリアも一緒に魔法を使う予定だったが、王家が用意した魔石を使わずにセシリアが手を出すのは、体面的にあまりよくない。
 本当は、そんなことなど気にせずにアルヴィンの手助けをしたいと思うが、そもそもこの儀式が王家の体面のためなのだ。