「話はもうひとつあるの。あの黒い瘴気にも関わっていることよ。わたしは、あれが何なのか知っているの」

 あの黒い瘴気には、魔族が関わっている。
 だから、気をつけてほしい。
 儀式が間近に迫っている今、アルヴィンに伝えられるのはそれだけだ。この儀式を無事に乗り越えたら、今度こそすべてを彼に話すと決めていた。
 あとは、魔石の代わりをセシリアが務めることについてだ。
「わたしはもう、魔力の制御に不安はないわ。危険だと思ったら、ちゃんと身を引くこともできる。だから、お願い。アルヴィンのことが大切で、心配なのよ」
 必死にそう懇願した。
 それに、今ならセシリアひとりでも王都の結界を張ることができそうだ。魔力はかなり使うだろうが、後遺症など残らない範囲だ。
 アルヴィンにそう伝えると、彼は仕方なく頷いた。
「……そう言われたら、断ることはできないな。だが、けっして無理はしないように。あくまでも結界を張るのは俺だ。念のために少し、力を借りるだけだ」
「ええ、もちろんよ。無理はしないわ」
 アルヴィンがようやく承知してくれたことが嬉しくて、笑顔になる。