アルヴィンはセシリアの手を取ると、自分の方に抱き寄せる。セシリアも逆らうことなく、それに従った。
「心当たりがあるのか?」
「え?」
「その黒い瘴気の正体に。近頃ずっと不安そうにしているのは、そのせいだろう?」
「……っ」
 まさか見抜かれているとは思わなかった。
 セシリアは繋いでいたアルヴィンの手を、強く握りしめる。
「気付いていたの?」
「ああ、もちろんだ。だが、セシリアが話してくれるまで待とうと思っていた」
 ずっと見守っていてくれたことを知って、迷いがなくなる。
 信じてもらえないかもしれない。
 でも彼に、すべてを話してみよう。
 アルヴィンはもう、セシリアの半身だ。
「聞いてほしいことがあるの。ひとつは、信じられないような話かもしれないけど」
 まずは異世界転生について。
「わたしも、その昔の転生者のように、前世の記憶があるの。だから、今まで魔力が馴染まなかったのだと思う」
 アルヴィンは驚いた様子も見せずに、静かに頷いた。
「転生者だろうな、とは思っていた。魔力が馴染まない理由が、他に思いつかなかったからな。ただ、以前の記憶がないのかと思って、深く聞かなかった」