「そんなに心配しないで。この腕輪を外したりはしないから。ただ魔石の代わりに、少しだけ手伝わせてほしいだけよ」
「結界など俺ひとりで充分だ。だからセシリアは、傍にいてくれたらそれでいい」
「……アルヴィン?」
 だが、いつもはセシリアの意志を尊重してくれるアルヴィンが、ここまで反対するのも珍しい。
 ふと嫌な予感がして、セシリアは目の前に立つ彼を見上げる。
「……もしかして王都の結界って、アルヴィンが説明してくれたほど、簡単でも安全でもなかったの?」
「いや、結界を張る魔法は簡単なものだ。時間もそう掛からない」
 アルヴィンは即座に否定した。
 それでもセシリアは納得しない。
 理由を説明せずに、ただ反対するような人ではない。
「じゃあ、どうして?」
 そんなに自分の協力を拒むのか。
 必死に詰めよると、彼はようやく教えてくれた。
「それは、どれだけの魔力が必要となるか、はっきりとわからないからだ。だから念のために、あの魔石を用意していた」
「そんな……」
 セシリアは両手をきつく握りしめた。
 結界魔法は、何度か使ったことがあると言っていた。