驚くアルヴィンに微笑みかけて、セシリアは呆然としている王女のミルファーと王太子のアレクを見た。
「わたしの魔力はそれほど大きなものではありませんが、アルヴィンの手助けをすることはできます。王都の結界はふたりで張ってみせますので、ご安心ください」
「セシリア!」
 儀式の準備のために控え室に戻ると、アルヴィンはセシリアの名を呼びながら、行く先を遮るようにその前に立つ。
「お前が力を使う必要はない。王都の結界くらい、俺ひとりで充分だ」
「もともと、ブランジーニ公爵家の忠誠を示すための儀式よ。わたしも力を貸した方が、それらしいでしょう?」
「こんな儀式に、そこまでする必要は……」
 もし王城の人たちに聞かれたら大変なことになる言葉だが、控え室に入った途端、アルヴィンが防音魔法を使ったことを知っていた。
 だからセシリアも、ここでは本音で話すことができる。
「わたしも、そんな儀式のために、アルヴィンに無理をしてほしくないの」
「だが……」
 何とか思い止まらせようと言葉を尽くすアルヴィンに、セシリアは微笑みかけた。