俯くセシリアに、アルヴィンは優しく言ってくれた。
「急いで結論を出す必要はない。セシリアがどちらを選んでも、俺が必ず守るから心配するな」
「……うん。ありがとう」

 魔法書を手にしたものの、今日はその内容がまったく頭に入ってこない。セシリアは本を読むことをあきらめて、テーブルの上に置いた。
 そして、自分はこれからどうしたらいいのか、じっくりと考えてみる。
 王都に結界を張るための儀式は、完全に王家の都合で執り行われるものだ。
 だから父はもちろん、アルヴィンでさえそれをあまり重要視していない。
 この国にまったく興味がない父と、同じようにこの国には何の思い入れのないアルヴィンのことだ。それも仕方がないと思える。
 でもセシリアは、父が初めて自分の代理を立て、それに自分が指名されたことを、とても重く捉えていた。
(ゲームなら、ここでルートが変わる選択肢よね。どうしたらいいのかしら……)
 アルヴィンはどちらを選んでもかまわないと言っていた。だからこそ、自分ひとりで決めなくてはならない。
 あの父のことだ。