「セシリアは、身体が弱くて気弱だという設定になっている。リハーサルや準備には参加して、当日は具合が悪いと言って、倒れてしまえばいい」
「……でも、アルヴィンをひとりにするなんて」
「俺は大丈夫だ。魔石を使って結界を張るだけだからな。セシリアの安全の方が大切だ」
 安全を確保しなければと彼が思っているのなら、やはり危険な目に合うかもしれないということだ。
「やっぱり、わたしが参加したらお兄様は……」
「間違いなく、自分が後継者から外されたと思って、セシリアを恨むだろう」
「……」
 俯くセシリアの肩を、アルヴィンは抱き寄せる。
「心配するな。すべて俺に任せておけ」
「アルヴィン……」
 彼を、傍で見守りたい。
 何度も心配ないと言われたが、先代の王妃は視力を失ってしまうほどの魔力を使ったのだ。自分のために、それほどの大きな魔法を使ってくれるアルヴィンの傍にいたい。
 そう思うが、やはりゲームでセシリアを殺したのは兄だ。そのことが、気に掛かる。
(あれは悪役令嬢だったセシリアよ。今のことではないわ) 
 心が揺れていた。
「まだ、考える時間はある」